明治36年に海軍直轄の造船所である海軍工廠が設置された呉は、以後ずっと造船の町として栄えてきた。 ここでは戦前から戦中にかけては戦艦を、また戦後は巨大なタンカーを多数建造し、日本を世界有数の造船国 へと発展させる大きな力となった。 呉と聞いて多くの人が思い浮かべるのは、あの戦艦大和ではないだろうか。当時の最先端技術を結集し、 昭和12年(1937)年から4年余りをかけて秘密裏に建造された大和。ある人は3千人以上の乗組員を犠牲に した事実から大和を戦争の負の遺産としてみるだろう。
しかしその一方で、戦争はさまざまな技術を発展させる側面を持っている。大和もまた、その建造だけでなく、 自動車や家電製品の製造など幅広い分野に応用され、戦後日本の復興を支えてきた。 平成17年(2005)年に開館した大和ミュージアムには、そんな大和が10分の1のスケールで復元・展示 せれている。全長26メートル、手に入る限りの史料に基づいた最新の考証によってよみがえった大和の使命 は、平和の大切さと科学技術の素晴らしさを後世に語り継ぐことにある。